Type Projectに行ってきた(2007年の原稿の再投稿)AXISフォント

この記事は2007年にAXISフォントを作っているType Projectに行ってきた時のボイスレコーダーの内容です(掲載許可済み)なので今日のType Projectやフロップデザインの内容・考えとは大きく異なっている場合がありますのでご了承下さい。また当時のフォントの感想なので、時代が変わった今とは違うと感じる部分もあるかとは思います。私自身それを理解しつつも2007年の記事を再度掲載したいと思います。

それでは、はじまりはじまり。

 

Type Projectは練馬区の割と閑静な所にあります。
こんな所も、従来のデザイナーの仕事場とはちょっと違う部分を感じます。
仕事場の雰囲気も、クールでシンプルで都会的というよりは
ゆったりとしていて、懐かしい雰囲気です。
そして、本当の意味での知性とヴィジョンを持ったチームだと思いました。

また、予備知識のない人のために、簡単に言うと
Type Projectは現在フォント製作を主とした仕事をしています。
メンバーは現在3人。鈴木功を中心としてAXIS Fontの製作など
和文の世界に新鮮な風を送り込んでいます。
さらに、詳しく知りたい人はホームページをご覧下さい。

それでは、おじゃまします。


左から鈴木 功、小澤 裕、岡野邦彦氏

第一回 AXIS Condensed(コンデンスド)について

加藤(フロップデザイン) はじめに、新しく出たAXIS Condensedの事ですが。

鈴木(Type Project) コンデンスドなんですけど、まだAXIS誌ぐらいしか使ってくれていないんです。
なので、あんまりしっかり使ってくれている例がないんですよね。
加藤 AXISの表紙に欧文は結構ズラーっと並んでいたような。
鈴木 欧文はさりげなく使っている部分もあるんですけど。
和文の方はまだ少ないですね。

最近、サファリ(ブラウザー)で標準フォントに指定していろいろ見ています。
最初はちょっとウワッと思ったんですけど。
しばらく見ていると目が慣れてきてなかなか良いです。
印刷の方は最初は結構抵抗あるかなと言う気はしているんですけど、使いどころさえピタッとはまれば面白いんじゃないかと。

加藤 僕は、このフォントはすごく使われるんじゃないかなと思うんです。
僕が世の中で必要とされているフォントベスト5と言うのがあって、ゴシック体のコンデンスドはその筆頭ですから。
AXIS Fontは、どっちかというと印刷の方で使われるんじゃないかと思います。世の中見渡してみると、とくに看板とかは殆どが長体の変形をかけられているわけですし。
鈴木 気にしだしたら、きりがないよね。
とにかく溢れすぎているから。
ゴシック体の方が、悪影響をより多く受けやすい。
加藤 あと、丸ゴシックの方がより汚い、丸が変形になっているから。
鈴木 特に斜めの払いね。
加藤 日本の「本」の「はらい」の部分ですね。
鈴木 そういった意味では、AXIS Condensed-ラウンドとか
加藤 変形をかけて醜く見えるのを、減らすという意味でも、意味がありそうだと。
でも、実はそこまではあまり気にしないのかな。
鈴木 比較して見せてあげればいいと思う。
例えば2つの違うデザインの明朝体を見比べて貰う以上に
違いはわかりやすいですよね。
加藤 確かにAXIS FontのBasicよりも、コンセプトがわかりやすいですね。

加藤 AXIS Fontシリーズは、なぜ作られたのかという疑問があるんですが。
AXIS誌というものがあって、それにあわせて作るという部分を抜きにして。お話していただけますでしょうか?
鈴木 具体的には新ゴシックという存在があって、あまりにも使われすぎているので
新ゴ以外にも選択肢として、ウェイトもファミリーも豊富な和文のサンセリフが欲しいなというのがありました。
新ゴは存在としても、デザインとしても意識しています。
加藤 デザイナーは新ゴを一番よく使っているし、本当にありとあらゆる使われ方をしていて、圧倒的ですからね。
鈴木 欧文の世界だと、サンセリフといっても、ものすごいバリエーションがあって、オールドスタイル、モダン、ジオメトリックなどいろいろなあるんですけど。
書体マップみたいな部分で言うと、日本のゴシック体にはまだまだ空いている所があるんじゃないかなぁと。
AXIS Fontはそういう僕の頭の中にある、空いている部分のマップに置いてみたわけなんです。

加藤 ゴシックについては、本当にデザイナーはまだまだ足りなくて困っています。
鈴木 そうなんですかねぇ。
加藤 困っていると思います。
鈴木 どういう所が特に足りないと思いますか?
加藤 僕自身は、ゴナ以降のデザインにゴシック全体が引っ張られすぎていると思っています。
デザイナーが使うにしても、一般の人が使うにしても、
時代とのギャップが出始めているんじゃないかと。
鈴木 今の人がかっこいいと思うゴシックのスタイルは、まだ別にあると。
加藤 そうですね。僕の世代だと新ゴ=カッコイイと捉えていると思う。
若い人に好感度調査をやったら新ゴは「やぼったい」と感じる人が結構多いんじゃないかと。
鈴木 そういう結果が出るかもしれませんね。
加藤 時代の流れというか、そろそろ厳しいなみたいな。
雑誌とかもここ数年は「クウネル」とかの影響もあって
新ゴなどのモダンなゴシックで、誌面を作るにはテイスト的に難しいなと言うか
そういった誌面が増えてきている気がします。
それは、若い人たちの意識が何か変わってきているからじゃないかなと。
今の人たちは、間というか空気感みたいな物を大事にするし
文字の書き方も逆に正方形を意識しない書き方に変わってきている。

鈴木 若い人というのは何歳ぐらいですか?
加藤 10代~20代前半です。特に女性を意識して話しています。
女性の方が字への意識が高いと思っているので。
書くのも読むのも女性の方がきっと多い。
逆に男性は実用であれば気にならない部分も多い。
少なくとも、書くことに関しては、女性の方が絶対多いだろうと思っています。
鈴木 そうでしょうね。
加藤 なので普通にブログを書くのにも今のゴシックでは気持ちを伝えにくい。
鈴木 ざっくり男と女にわけちゃうと怒られちゃうかもしれないんだけど。
大学でレポートを見ると、男の方がキレイに書く意識は低いかもしれない。
女性が平均80点くらいだと男性は70点を下回る、ヘタしたらもっと違う。
見せる意識というか、自分の一部という考えがかなり強く、男には基本的にそんなにない気がします。
加藤 そういう風に考えていくと、ゴシックでも全然空いているマップがある気がします。
鈴木 加藤さんのサイトにくる人や、本を買う人の男女比はどのくらいですか?
加藤 実際は6:4で女性が多いと思っています。
掲示板に書き込んだり、アクションを起こすのは特に女性が多いです。
鈴木 美術系の大学では最近は女性の方が多いんですが、仕事をしたり、活躍しているデザイナーの数はまだ男性の方が多いと思うんです。
それが実際に使って買う、フォントの男女比に反映されている。
それがあと5年、10年すると女性が増えてくる予感はします。
加藤 そんな気がしますね。

鈴木 僕は前の会社のいるときにマッチョとかフェミニンとか、
例えばMB101とかを、どう考えてもマッチョだよねとか言っていたんですが
もちろんそういう言い方に、ピンとくる人とこない人がいると思うんですけど
やっぱりあると思うんですよね。
石井書体なんかどうなんだろうね。
石井ゴシックなんかは中庸な気がする。
小澤(Type Project) どっちかというと女性的だと思う。
鈴木 それは石井茂吉さんのもってる人間性というか
中性的な部分じゃないかと思うんですね。
小澤 そういうことになるとエリックギルがなんとかとか・・・
鈴木 きわどい議論だよね。でもそういう感じですよ。
MB101を描いたモリサワ文研の森さんという方に、
十年ほど前にお会いしたんですけど
マッチョではないんだけど、少なくともフェミニンではなかったな。


MB101の文字

加藤 今あるゴシックのフォントの中で
AXIS Fontはフェミニンな方だと思っています。
鈴木 そうですか。僕は、僕自身がマッチョだと思っているので
加藤 新ゴよりもフェミニンに属すると思っています。
鈴木 えっ、そうですか、新ゴと比較してもですか?
加藤 はい。
鈴木 へー
加藤 一般ユーザーが受け止めている感じもそうじゃないかなと。
鈴木 最近は自分自身で見ても、そういう風に感じ事もあるんですけど。
だけど作っているさなかの時には、全く意識してなくて。
全くというと語弊があるんですが
ニュートラルな感じは作りながら意識していたし
フェミニンにもマッチョにも寄らないようには思っていました。
僕はもともとはマッチョな部分が強いと思うので
あえてフェミニンな方向に引っ張っていって
ニュートラルに落ち着いたらいいなと。

一方、小林さん(小林章)が作っているアルファベットを見ていて
「かわいい字」だなぁと見ていたのはあるんですけどね。
人のは良くわかるというか。

AXIS Fontのアルファベット

鈴木 男女でフォントの好感度調査みたいなものをやったら違いがでると思います?
加藤 僕はでると思います。
小澤 ちょっと話が変わるんですが、表情の変化とか声の変化とかの認識は女性の方が高いらしいですよ。
鈴木 そことリンクしていたら面白いな。
加藤 文字に対して考える度合いは女性の方が敏感じゃないかな。
小澤 医学的には、女性の方が脳梁が大きいそうで、右脳と左脳の情報のや
り取りがスムーズらしいですよ。
鈴木 女性のほうが同時並行で作業をおこなう能力が優れているという話しを
聞いたことがあります。
タイプフェイス(文字)に対する感性についてもそうだと面白いなあ。
加藤 そういうのはあると思いますよ。
AXIS Fontの使われているレイアウトを見てみると女性的な誌面や
間(スペース)を大切にする場合が多い気がする。
文字の好みに性別は関係してそうですよ。
鈴木 ゆるゆるで組んでも、イメージは割と損なわれないと思います。
文字と文字の間が広い方が、今後何年かの好まれる空気のあり方だとは思います。

加藤 それに加えて、気になることは年々、ひらがなと漢字の大きさの差が広がってきている気がする。
鈴木 うん、それはどう思われています。
加藤 結果的に書き文字に関しては、ひらがなと漢字の大きさの差が広がってきていると思います。
鈴木 なにか書体で例はありますか?
加藤 うーん。難しいな。書体で言うとそれがあんまりないから困っている。
ぜんぜん違う例かもしれないけど「丸明オールド」とかは割と
漢字とひらがなの差が大きい書体ですよね。
レトロな雰囲気以外にも、そういった部分も人気の理由かもしれないと。
あとミウラライナーなんかも、そういった顕著な例だと思います。
鈴木 そうですね。
しかもミウラライナーは漢字の中でも大きさに結構違いがあるなぁ。

鈴木 僕らが書体をモダンというときに、かなりこういうのだという、
いくつかの具体的なイメージがガッチリあるんです。
もしかしたら、そういう所からキッチリ検証をしなおす必要があるのかもしれないな。
ヒューマンってのは難しいよね。何、ヒューマンって(笑)
ジオメトリックってのは定義がしやすいんですけども。
加藤 モダン、オールドという判断は難しいですね。
最近はオールドなテイストも、モダンな誌面でうけていますから。
鈴木 新ゴが「やぼったい」と感じる人がいるんじゃないかという話ですが、
もし、若い人から徐々に新ゴがクールじゃないと感じ始めているとしたら、
モダン-サンセリフの代表格とも言える新ゴが
モダンじゃないんじゃないの、ということも言えるわけで。
加藤 再び新ゴがモダンでクールだと強く感じる時もあると思うんですが、
今の現状から言えば、歴史のサイクルとしてバツが悪いというか。
新ゴ自体は、僕も好きなんですが全体的な時代の流れとしてイマイチかな。
何年目かはキッチリ知らないんですけど。
小澤 えーと、90年ですかね。
鈴木 写植の新ゴは90年ですって。
古いと言っても、まだそれぐらいか、意外だな。
ゴナは、どうだったっけな。


ゴナの文字


新ゴの文字

加藤 ゴナはでて結構経っているのに、そんなに古く感じないほうが驚きです。
鈴木 ゴナはよくできてますからねぇ。 30年経ってます。
僕は新ゴは横組みが綺麗だと思っているんだけど、ゴナは縦がいいと思うな。

小澤 ゴナは(フトコロが広いゴシックでありながら)骨格がしまっ
てますから
鈴木 この流れを未だにモダンとしているとなると
感覚がずれてきているというのもわかりますね。
加藤 ずれてるんだけど、ズレが無いように
デザイナーが調整しているのかもしれないです。
鈴木 固定観念的な所があってモダンな誌面だから
モダンと言われているフォントを使っている。
それはすごくある気がするなぁ。
加藤 ちょっと違和感がありつつも、雰囲気を調整することで誌面まとめている。

鈴木 では、明朝体なんかの意識はどうですか?
本文用書体の王道だと、しばらく前までは言えたのかもしれない。
だけど、今は見出しはゴシックで、本文は明朝というのは少なくとも無い。
明朝体が今後どうなっていくのかは、僕がすごく興味を持っていて、
10代の人たちが明朝体から何を感じているのか?
加藤 僕は実は、若い人はそんなに明朝体について考えていないんじゃないかなぁと思っています。
明朝体の中での違いがわからなくなって来ているんじゃないかと。
鈴木 文庫で本を読まなくなってきている世代が増えてきているとなると
明朝体に対する微妙な味の感性が磨かれないんじゃない。
加藤 たぶん年々、明朝体を見る機会は減っていくと思います。
携帯電話もそうだし、パソコンもゴシックが主流ですから。
ゴシックで本文を見ることに違和感が無くなるんじゃ。

鈴木 手書きの文字というのは、今そこで生まれつつある、時代そのものが投影
されたものだと思いますが
一方で手書きの文字と、フォントの違いもあって。
フォントにするというのは標準化を行うことになる、
手書きの文字というのはもっと自由に表現できる。
文字の気分によって大きさをだんだんと変えていったり、
文字の空きも自在に変えることもできる。
その差はどうなんでしょうか?
加藤 フォントは単にデザインですよ。
僕は書いてる文字が、本来の文字だと思っています。
シャープペンは当たり前になっているし、ペンは細くなってきていますし
そういった変化が文字の変化だと。
小澤 手帳に、細いペンで書くんだよね。0.3mmとかで。
鈴木 そういうことは線の縦横の太さ違いなんて無いって事ですね。
加藤 そして細くて、ひらがなが小さくて漢字はなぜかデカイ(笑)
小澤 小さいサイズの手帳にびっしりと、書くんだよね。
鈴木 確かに細くなってきている傾向はあるよね。
僕らのころは、結構太かったもの。
加藤 ペン書きの文字というのはゴシック的だと思います。
そして細く小さくなってきている。
鈴木 それは好みなんでしょうかね。どういう意識で小さくしているんだろう。
単に筆記用具が細くなったからできるようになったから?
小澤 電車の中で女の子がスケジュール帳みたいなのに書いているの
を見たことあるんですけど、日付があってその下にこうスケジュールとか日記が。
鈴木 そりゃ小さくなるわね。
小澤 あと、どこでも書くとなると内容を
(他人に)見られるかもしれない。
ちっちゃく書いたら見えにくくなるわけじゃない。
鈴木 汚く書けばいいじゃない(笑)
小澤 あえて汚く書くのは女の子だから無理でしょ。
鈴木 小さく書くことで、シークレットな性格を持たせてると。
小澤 僕は無きにしもあらずだと。
僕自身、見られたくない部分はちっちゃく書くからね。
鈴木 ほうほうほう、それは面白い。
加藤 僕は単純に筆記用具の進化かなと。
鈴木 それは大前提としてあるよね。でも両輪ですよね。
細くて小さい文字が好まれるから、どんどんその方向へ進んでいくわけで。
小澤 僕の好きなハイテックCって150~200円くらいするんですよ。
普通の液体ボールペンだったら100円なんですね。
でもハイテックCは無くならないで、
むしろバリエーションが増える方向にあるんです。
ベーシックな色が普通にあったんですけど、 それ以外に
パステル調のカラフルな女の子が好きそうな色が、すっごい増えているんですよ。


ハイテックCの0.25mm

鈴木 それは市場が広がっているって事だもんね。つまり需要があるから。
加藤 僕、今年の年賀状もらって年賀状の文字が小さいんですよ。
生まれつき近眼なので読め無くって・・・しんどいなと。
鈴木 今の聞いていて、ふと思ったのが漢字とかなの大きさが違うってのも、
画数の多い漢字を「かな」と同じ大きさで書けないという
物理的な要因もあるんじゃないかと。
加藤 例えば「夢」という漢字を小さく書くのが難しいから
結果的に大きくなるのかもしれないですね。
小澤 あと、略さないからじゃ。
僕らの前の世代だと、結構略せるじゃない。 複雑な漢字をね。
できるでしょ、僕らの前の世代だと。
鈴木 それもあるなぁ。

こんな感じの会話が続いていきましたが
終始、親切に接してくれて
とても勉強になりました。

Type Project様おじゃましました。
そして、ありがとうございました。